地域における「ご近所つきあい」に関する調査(2015年)

●調査の概要●

調査対象は、北海道道東地域に位置するA町です。A町は、人口約5千人の林業を中心とした小さな町です。 調査の基礎データとして用いた2010 年の国勢調査に基づく高齢化率は 37.4%です。本調査は、A町役場及びA 町社会福祉協議会と共同してA町の全世帯から無作為に5分の1(499 世帯)を抽出し、自記式調査用紙を郵送、戸別訪問により回収を行いました。 調査票の内容は、回答者及び世帯の基本属性に加え、世帯の生活上の困りごと、自治会や町全体における近隣とのつきあいの程度を尋ねる項目から構成されています。調査票の回収は、調査員(A町役場職員、A町社会福 祉協議会職員、研究者)の複数体制による全戸訪問によって実施しました。その際、訪問した調査員は、アンケート項目の内容に沿って回答内容の確認に加えて、各世帯の生活課題を必要に応じて聞き取りを行いました。調査時期は、2015年7月~12月です。調査票発送数は 499票、全戸訪問による回収422票(有効回答数同数票)、 有効回収率は 84.6%でした。

●●調査結果の概要(ポイント)●●

ポイント① 25年後の日本で想定される地域における生活課題を明らかにする

A町を調査対象地して選定した理由の一つは、この地域の人口構造が2040年時点での日本全体の人口構造と酷似していることです。つまり、この地域での状況は、約25年後の日本の地域社会の実態を想定するための一つのメルクマールとなる可能性があるということです。人口減少と少子高齢化という人口構造の変化は、私たちの生活にどのような影響を与えるのでしょうか。A町での調査結果は、日本におけるまちづくりや福祉施策のあり方に重要な示唆を与えることになるはずです。ちなみに、調査対象となった世帯に80歳以上の高齢者が84人おられましたが、そのうちの実に約半数が一人暮らしでした。

ポイント② 何らかの支援を要する世帯が3割にのぼる   

回答の得られた422票の調査票及び聞き取り調査の内容について、生活課題(困りごと)の困難性の程度及び内容について、一定の基準に基づいて分析しました。今回の調査の分析の特徴は、困難性の程度については、生活課題を次の3つに分類して把握しようとしたこと です。特に、予防的ニーズといえる「要支援予備軍事例」の実態を把握できたことは大きな意味があります。

  1. 要支援事例(現状のままでは放置できない状態にあり、早急に専門的援助を要する事例) 
  2. 準要支援事例(「要支援事例」には該当しないものの、周囲から何からのサポートを要する事例) 
  3. 要支援予備軍事例(「要支援事例」及び「準要支援事例」には該当しないものの、周囲が気にかけておく 必要があり、将来的に支援を要する可能性がある事例)

 その結果、「要支援事例」37 件(8.8%)、「準要支援事例」46 件(10.9%)、「要支援予備軍事例」44 件(10.4 %)が確認されました。これらを合計すると、全体の約3割が何かしらの支援を要する可能性がある世帯ということが明らかとなりました。「要支援事例」と「準要支援事例」への対応ももちろん大切ですが、課題が深刻になってから事後的に対応するのではなく、「要支援予備軍事例」に早期にアプローチすることがきわめて重要となります。

 ポイント③ 15 歳以上 65 歳未満の人のうち、2%の人が長期にひきこもっている

今回の調査で明らかになったことの一つは、調査対象の世帯を丁寧に全戸訪問してみると、想定以上に長期に ひきこもっている人が多かったことです。今や、社会的孤立の象徴ともいえる社会的課題の一つですが、実際は相当深刻な事態となっています。長期にひきこもっている人は、全員が男性で、半数以上が 40 歳以上の高年層でした。その背景や要因も多様 で深刻ですが、いずれも早期のアプローチが必要であり、また社会的居場所づくりや多様な就労の機会等、支援のための環境整備が不可欠です。